私の人生の指針である、
並んでいる本、発見!
養老先生まで並んでいる!
登山者用地図アプリを提供するYAMAPの創業者、春山慶彦さんが
お三方との対話をまとめた本です。
養老先生は、
「こどもをまともに育てようと思うなら、
自然の中で思う存分遊ばせるのが一番いいんです」
「外遊びの中でも、特に虫捕りがいいですね」と
おっしゃっています。
さすが「虫屋」!。
あと、
災害など起こったときに一番強いのは、
ローカルに自給している地域だから、
都市の人たちがもっと田舎に行って、
地方と都市を行き来する「逆参勤交代」案の話も
面白いと思いました。
ちょうど、
全国市町村の4割超にあたる744自治体が
「消滅可能性自治体」であるという
報告書が発表されたとニュースになっていましたが、
フランスのバカンスのように、
そういうローカルなところへ
1年のうち1か月でも滞在することで、
都市生活で失ってしまっている自然への感覚や
自然とつきあう能力を取り戻せるし、
人の行き来があれば、
過疎地も活気を取り戻すことができる、というアイデア。
養老先生の言葉でしっかり書き留めておきたいのは
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もう一つ大事なことを言うと、
大規模な災害の後、
どのような日常をつくっていくのかということを、
今から考えていかなければなりません。
たとえば、関東大震災の後、
日本は大正デモクラシーから戦争へと突き進んでいきましたし、
幕末の安政の大地震でも、
明治維新へと大きく時代は動くことになりました。
このように、
「空気で動く」と言われる日本社会は、
天災の後、
空気が一変してしまうからです。
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という言葉。
私たちの世代がしっかりしないと、
ほんとあっという間に流されていくのが
安易に想像できる。
これは本当に恐ろしい。
中村桂子先生は、
「今の新自由主義では、
一つの価値観を決めてその中で競争させ、
一番、二番、三番を決めますね。
一つの物差しだけで測る社会をつくってしまったから、
生きものとしての人間の能力や価値、楽しさというものが
どんどん消されていって、とても生きにくくなっています。
今のこどもたちの育て方も、
競争させて『とにかく一番になりなさい』という
教育がほとんどですけれど、
こどもはのびのびとしているのが望ましい状態でしょう。」
とおっしゃっています。
生きものはどれも四〇億年の時間の歴史を持っていて、
みんな同じ位置にいる。
人間がピラミッドの頂点にいるのではなく、
「私たち生きもの」の中にいることを、
自然と触れ合うことで感じられる。
それは広大な自然のあるところへ
行かなければならないわけではない。
すぐそこにある自然が見えていないだけではないか。
生きものは無駄があることで続いてきたのに、
今の社会はあまりにも効率重視になっている。
社会で大きな声で言われていることについていくことはせず、
今大事なことは何かを自分で考える生き方をする。
中村先生の、
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「何が嫌いか」と聞かれたら権力ですね。
権力におもねって生きることだけは一生しないでしょう。
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と言いきるところが格好良い。
池澤夏樹氏との対話は、
星野道夫氏を軸に進んでいます。
著者の春山さんは、
星野氏と池澤氏が憧れの存在なのだと
ひしひし伝わってきます。
こどもの育て方については
特に対話に出てきませんでしたが、
春山さんは、
高層ビルの中でサステーナビリティやESG 、SDGsを語る
ほとんどの人たちが、自然経験をしていないことに気づいた。
自然経験のない人たちが、
自然や環境に関する話題を話したり、
対策を練ったりしているから、
とんちんかんなことになってしまっている。
とおっしゃっているので、
「こどもを野に放て!」だけでなく、
「大人もともに野に出よ!」ってことなのでしょう。
池澤氏の言葉
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個人単位で自然とつながるだけだと
単なる趣味の登山になってしまいます。
だから、人間全体の立つ位置を本来の場所に戻し、
人間を含む世界像から世界に働きかけることが大事なのです。
自然は恩恵であると同時に、生きることに対する制約でもある。
そんなあたりまえのことを忘れてしまった人間は、
生きるということをなめていて、
本来受け取るべきリスクをサボっているから、
それに対応する力や知恵がない。
そこが、自然の中でインチキせずに生きる力を
身につけている動物との違いです。
そんなふうにゆがんだ人間の社会は、
一見繁栄しているように見えながら、
非常に危ういと言えます。
そういう人間社会に対して、
アラスカの自然は
「人間ももともとはこうやって生きていたんだよね」という
メッセージを出してくれる。
星野はそのメッセージを受け取り、
我々のところに運ぶことができた使者でした。
今、星野の本を読むと本当におもしろいと思いますよ。
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何の経験もないまま、
アラスカのような大自然に放たれても生きていけない。
だから、
巻末に紹介されている「自然観を考える上で道しるべとなる本」を読み、
山登りでもいいし、街中の公園でもいい、
食べ物を自分で育てたり、糠床や味噌など発酵食品を作ったり、
犬や猫など人間以外の生きものと暮らしてみたり、
衣食住を見つめ直す中で、
自然経験を重ねていくことが大切。
こどもを野に放つだけでなく、
大人もともに野に出て学ぶべきなんだな。
娘が小学生の頃、
2年ほどトンボのフィールドワークに参加していました。
年間通して、
とある川周辺に生息しているトンボやヤゴの種類と数を調べて、
川の環境保護の必要性を伝える活動の一員でした。
トンボやヤゴを捕まえて、
種類と雄か雌かを確認したあと放しますが、
捕まえることでその個体は消耗するだろうし、
なんだか申し訳ない気持ちになって、
やめました。
今は、捕まえたりしない、
眺めるだけの野鳥観察が
自分たちに合っていると分かりました。
ローカルな場所へ行こうと思うと車は必須、
でも車を持たない自分たちでも
街中で自然に触れられます。
2019年に、
シジュウカラ研究の鈴木俊貴さんを知ってから、
ほんと、野鳥観察が楽しくなりました。
最近のニュースで、
シジュウカラは「お先にどうぞ」という
ジェスチャーをすることが分かったと発表されていました。
人間だけが使えると考えられてきた言語や文法を使いこなし、
ジェスチャーもする小鳥の存在は、
中村桂子先生のいう、
人間がピラミッドの頂点にいるのではない、
みんな同じ位置にいることの証。
双眼鏡ひとつで街中で自然経験ができる
野鳥観察、おすすめです。
いつも読んでくださりありがとうございます